夜のない国ではみんながかたまって寝ていた 何重にも円をつくってかたまって寝ていた お辞儀をするような格好で前の生き物に身体を預けて 大きな花のようになって。 暗くなくちゃ寝れないからさ。こうやってみんなで暗くするんだよ その国の人間はみんなそういった。 夜のない国だから。 夜のない国ではみんな同じころに集まって寝る。 どんなへそ曲がりも夜になると寝るために集まった。 みんな同じ夢を見るんだ 同じ夢の違う時間を見るんだ へそ曲がりも意地悪も嘘つきも大きな花のようになって。 目覚めはみんな同じ時間だった。 起きると みんなで夢の話をする。 みんな同じでみんな少しづつ違っている同じ夢の地図を描くように。 それがこの国の一日の始まりだった。 夢の世界の地図は毎日広がっていく。 ある日のこと。 みんなが起きると眠りの円の中心に小さな球が出来ていた。 眠って咲いた大きな花の種のよう。 それがその国で出来た一番最初の夜だった。 覗くと暗闇の中にいくつもキラキラ光るものがある 小指の先ほどの小さな球の夜。 それから 夜は いくつも生まれた。 その国の人間の数だけ生まれた。 みんなそれを持って帰った。みんなかたまって寝なくなった。 夜を灯すと暗くなる。 何故だかみん なそれを知っていた。 みんなが別の時間に夜を灯して眠りにつく。 みんなが別の時間に眠るので大きな眠りの花は咲かなくなった。 みんなが自分の時間の中で自分の夜を持っている。 その国の夜はこうやって出来たんだ。 ここから始まったんだ ところが、しばらくすると、またかたまって眠るモノたちが出てきた。 その数は少しずつ増えて、ついに昔のようにみんながかたまって眠るようになった。 大きな花がまた咲いていた。 みんなの小さな球の夜たちは真ん中でくっついて 少しずつ大きくなってくっついて、 1つの大きな球になって膨らんで。 毎日人は集まって。毎日みんな集まって。寝て。 ついにはみんなが球の中に入って。大きな花が咲いて。 それでも毎日集まって寝て。同じ夢を見て。 小さな球の夜はいつしか大きくなって国を覆った。 そこでまたみんな集まらなくなった。 それでいいみたいだ。 僕の国の夜はこうやって出来たんだ。ここから始まったんだ。 今はみんな違う夢を見ている でもみんなまだ同じ夢を見ている 起きて話すと 必ず同じ夢を見ている。同じ夢の膨らみを。 ずっとみんな一つにかたまって大きな花を咲かせて寝ている。 (謎夜 8712夜目より抜粋)
近藤 寛恵
3/12/2020 08:22:50 pm
今まで私が読んだ久世さんの詞の中で一番感動し、一番好きです!!
久世です
3/13/2020 09:19:40 pm
僕も気に入ってます。 コメントの受け付けは終了しました。
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