茄子を8個と山芋を煮込んでいる。 昆布と椎茸と海老で出汁を取って。 茄子を洗って、包丁をいれて、 昆布と椎茸は少し硬く絞った布巾で拭いて、汚れを取ってぬるま湯に放り込んで。 海老は出汁パックに入れておく。 山芋は皮を全部剥かないでたわしで洗ってこそげたところだけ。 適当な大きさに切って、これは、茄子に少し火が入ってから入れようか。 ぐずぐずになって、汁が汚れるのが嫌だ。 茄子に包丁を入れるときいつもちょっと迷う。茄子に限らずだけど。 この茄子はここだなってなんだか確信めいたものがわいてそれに従ったり、 これはちょっと形が難しいなと思ったら案の定変な形に包丁が入ってしまったり。 ああ、このきれいな茄子の色、煮込んでも少しは残るといいな。 そう思いながら、塩水に浸して、酢を入れる。 手を拭いて、本を読む。立ちながら。壁に背を預けて。不思議とここが落ち着くんだよな。 時間がたったら、鍋に茄子を入れて、海老も入れて、落し蓋をして火を入れる。 本を読む。 コンロのすぐそばに椅子を持ってきた。 鍋が沸いてくる音が聞こえたら、日本酒とほんの少しのみりんとお醤油を入れる。 音は静かになった。 茄子に火が通るのを想像する。想像の茄子はまだまだ固い。 音はどんどん変わっていく。少しずつ激しく。大抵は規則的に。たまに不規則な音が入る。 蓋をして。少し火を弱める。 また本を読む。 本を読むのに邪魔なくらいの音になる前に、 火を弱めて、鍋の中を見る。茄子はまだきれいな紫。 もう少ししてから山芋を入れよう。 小さな火の音と、沸騰した出汁と煮込まれる茄子の音。 小海老の味が水に染み出て、茄子に染みこんでいるだろう、 昆布と椎茸もそれに重なっているだろう。。 そろそろ山芋を入れようか。山芋は少し硬めに仕上がるといいな。 また本を読む。一度蓋をあけたから、音はまた静かだ。 何かを煮込む工程の中、僕のしおり。きりのいいところまで読んで、火を止めた。 茄子の色は落ちてしまって、いくつかは煮崩れしたが、山芋は想像通りに仕上がった。 コメントの受け付けは終了しました。
|
詩描いた詩を載せていきます。過去のものも載せていきます。 アーカイブ
1月 2021
カテゴリ |