ふかふかの沼に包まれる感覚を知っているかな? 田んぼに足を突っ込んだことがあれば、それを思い出してもらえると助かる。 それがなければ海や川に全身浸かっている感覚が一番近いかな。 身体を包む優しい沼があってだな。 そこに全身を沈めるんだ。 水よりも密度のある沼の泥が全身を覆う。 わかるかな?1mmの隙間もなく、身体をふかふかと優しく覆ってくれるんだ。 自分の全ての場所が分け隔てなく覆われている気持の良さはいいようのないものなんだ。 覚えてないけど、母親のおなかの中にいるような安心感とでも言えばいいのだろうか。 その沼に入るとね。先端部分から少しずつ、 なんだか分からない生き物にたべられていくんだよ。 それが不思議と怖くないんだ。血は出てるのかわからないけど、痛くはないかな。 でも自分が減っていっているのがわかるからね。少しずつ。 たまに恐怖のようなものは身体をよぎることはあるよ。 でもふかふかの沼に身体が包まれているからあまり気にならないんだ。 少しずつ減る体を減っても泥が優しく覆ってくれる。 わかるんだよ。自分の身体がどれくらい減ったか。足はもう太ももくらいしかないな。 でも泥があるから自由だな。手はもう肩くらいまでしかないな。 でも泥があるから自由だな。 意思が伝達できるんだよ。 泥があることで、足や手の指があったころと同じように 泥が自分の意思を反映させて世界に伝えてくれるんだ。 頭だけになったら、そこでしばらく、身体は減らなくなるんだ。 頭だけになって、ふかふかの優しい泥に包まれて、身体が無くても困らなくなって。 むしろ前より密接に世界とつながっている感覚があって。 手を伸ばそうと頭が思ったら身体があるときは手だけ伸びるわけだけど。 今は地平線ごと星一つ分自分の身体になった気分でね。足もそうなんだ。 泥がね、血や内臓の代わりをしてくれるから死なないよ。 最後に頭も少しずつ食べられて自分の形はなくなるんだけど。 それは死ではなく世界との同化なんだ。 私はセカイになったんだ。ちゃんとそう思えるんだよ そして空気になって、ここで、情報として浮かんでいるんだよ。 気楽なもんさ。 コメントの受け付けは終了しました。
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1月 2021
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